サムライパン観賞の手引きと注意事項

 制作から「サムライについて何か書いて下さい」と言われたんですが、困ってるですよ。タイトルこそ「サムライパン」だけど話的には別にサムライと大して関係ないし、サムライに大して興味を持ってるわけでもないし、そもそもサムライが何なのかも良く知らなかったりもするし。日本史勉強したことないんで。俺の知ってるサムライなんて、ギターかトムクルーズか沢田研二ですよ。サムライものだと思って来場された方には誠に申し訳ない限りです。すんまへん。悪気は無かったんです。あれじゃないですか。今年の頭はちょこっとサムライブームだったじゃないですか。ブームに乗っかろうと思ったんですよ。そしたら、すぐ終わっちゃったね。あっと言う間に。参っちゃいますね。それにしても沢田研二の「サムライ」は片手にピストル持ってる時点で既にサムライっぽくないっすよね。歌い出しいきなりサムライ失格。
 でも改めてサムライとかって考えてみると、意外と内容とそう外れてもいないのかなーと思ったりもします。別にタイトルは何でもいいやーみたいな感じで書いてたんですよ。でももしこれが「フジヤマパン」とか「ゲイシャパン」、あるいは「自由の女神おにぎり」とか「コアラバーガー」、もっと言えば「三木谷社長のライブドア潰し物語」とか「マイケル・ムーア、ショックで激ヤセ」とか「大塚愛は自分を可愛いと思いすぎ」なんてタイトルだったら、全然違う話しになったはずである。そう思うと「サムライパン」ってタイトルのイメージからこの物語が生まれたのかもしれないですな。
 この物語のどこかにサムライっぽい部分が隠れている。それを捜してもらえると、私にとってこれ以上の喜びは無い。あ、物理的に本物のサムライが隠れてる訳じゃないからね。変にキョロキョロしちゃ駄目よん。

2004年11月 中出貴也

(『サムライパン』パンフレット掲載)

『逆R指定』

 『R25』が話題である。例の無料配布型週刊誌である。Y駅の配布所には木曜日の朝、一度に数百冊が並べられるが、老若男女が群がり、あっという間に無くなっている。
 さて、『R25』と聞いて『R62号の発明』を思い出した人は、チョットすごい。『R・田中一郎君』を思い出した人は、自分の来し方をもう一度見直した方が良いかもしれない。
 というわけで、私はてっきりロボットのRだと思っていたのだが、公式HPによれば『リストリクト(Restrict:制限)』という意味、つまり『25禁』とのこと。しかも男性誌らしい。
 つまり、Y駅の配布所の状況を考えると、『読者の多くが対象外』という前代未聞の雑誌なのである。
 そんな木曜日の朝、台風18号の影響で強い風が吹いていたが、陽当たりは良好であった。
 そして、彼と彼女は喧嘩をしているように見えた。『見えた。』というのは、彼の表情はいたって真剣であったし、彼女の顔を覗き込みながら何かを訴えていたからである。
 一方の彼女は何も喋らず、目線も少し落とし気味ではあったが、決して彼に負けてはいない気持ちが少し離れた所にいる私にも伝わって来た。
 場所は駅ビルに入っているデパートの1階入口付近である。シャッターは、昨夜多くの買物客を吐き出し切ってからは閉じたままであり、幾百もの通勤客が彼と彼女の側を足早に通り過ぎて行く。
 まるで、映画のワンシーンのように彼と彼女の周りだけが異空間になったような陳腐なデジャヴを感じて、思わず可笑しくなってしまう。
 学校には間に合うのかな、と野暮な心配をしながらも、彼と彼女が人目を憚らず真剣に喧嘩できるのは、実はこんな場所しかないのだと気付くと、開店前のデパートの入口が16歳以上お断りのようにも思えてくるから不思議である。

2004年9月木曜日 演出家

(『サムライパン』チラシ掲載)

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