猛々しいとはこういうことさ Part1

ある朝私が森の奥の泉のほとりで
水面に映る自分の素顔に見惚れていると、
胸のポッケに入れた長年愛用のDoCoMoの携帯を
深い泉の中に落としてしまいました。
私が悲しみに暮れていると泉の中から鈴木京香が現れて言うのです。
「あなたが落としたのはこの古い携帯?それともこの新しい携帯?」
彼女は両の手にDoCoMoの携帯を握りしめ私に迫ります。
正直者で何よりモノを大切にする私は迷わず答えました。
「此の古き携帯こそ紛う方なき我が携帯なり」
すると彼女は最新式のデジタル・ムーバN206Sを
差し出しながら言うのです。
「はい、むらっと茶!!」
その顔は、まるで中村玉緒でした。
私は咄嗟に「ダメじゃん!」と叫びながら
彼女の手から我が携帯を奪い取り
一目散で森の外れにある我が家へと逃げ帰りました。
・・・それからです。
我が家にDoCoMoの黒い影が忍び寄るようになったのは。
それは「無料お取替キャンペーン」の名のもとに
我が愛用の携帯を奪わんとするものでした。
最初は「お近くのDoCoMoショップへお越し下さい」
という穏便な内容でしたが、最近では
「担当がご自宅まで交換に伺います」
果ては「バイク便を差し向けます」と
次第にエスカレートしてきました。
何故にそこまでして私の携帯が欲しいのか?
そして、森の泉に棲む「中村玉緒」の謎は?
今日も眠れぬ夜が続くのであります。

1998年7月末日 演出 羽田野真男

                (「猛々しき人々」チラシ掲載)

猛々しいとはこういうことさPart2

 最近ヒマを持て余してしまってどうしようもない。何もすること
がないので、仕方なしに芝居などやっているが、これがどうにもい
けない。というのも、芝居などやっているのは、ヒマな人に決まっ
ているので、私のまわりにはヒマな人ばかりが集まってくる。ヒマ
な人ばかりが集まっても、みな何もすることがないので、口々に
「ヒマだねえ」などと言うばかりで、一向にラチがあかない。
 
 そうこうしているうちに本番の日がやって来るわけだが、そんな
具合なものだから、役者は舞台上で何をするわけでもなく、ただヒ
マそうにしているのである。もちろん観に来る客はヒマだから観に
来るわけで、特に問題もなく、ヒマはヒマなりに芝居は幕となり、
またいつものようにヒマを持て余すという寸法である。

 こんな私ではあるが、日本の将来を憂うこともある。すなわち、
私がこんなにヒマなのはさておき、私より忙しそうにしている人が
ごく少数しかいないことだ。こんなことで日本は本当に大丈夫なの
か?どうする日本!?どうなる日本!?
今日も眠れぬ夜が続くのである。

1998年9月暇日  演出家 

       (羽田野真男「猛々しき人々」パンフレット掲載)

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