『獏のゆりかご』稽古日誌 第8回(2019.10.13)

(写真左より関谷誠、太田尾暁子、松尾真樹)

『獏のゆりかご』初日まで:あと40日

―「ひと月前」という言葉が現実感を持って迫ってきました。

1ヶ月を切るとスタッフワークも定まってきて、キャストの外堀は埋められていきます。
創造性に身を任せて自由に作り続けられる時期はあとわずか。
役者たちは、いよいよ役の内面に深く潜ろうとしています。

『獏のゆりかご』は、大人たちの小さな秘密が暴かれる、ある半日の物語。
その秘密を秘密たらしめているのは、役のもつ苦い思い出や捻じれた関係性。
しかしこれを作るためには良い思い出や良い関係性も必要。
ここを演ずるため、この日は役者同士、演出役者間でのディスカッションが繰り返され、相手役との共通認識を深めていく作業に終始。
この視点で考えるとどうか、この瞬間はどんな状態なのか。
などと思考を巡らし重ね合わせる。

思い出と関係性。そこから発生する羞恥心、自尊心、虚栄心、遠慮に不安。
これらがあるから秘密にしようとする意志が生まれる。
秘密にしようとすることで初めて秘密は成り立つ。
そういった当たり前のことを演技で成り立たせるために必要なことは多岐に渡り。
台本を足掛かりに想像を広げ深め土台とし演じてみる、また立ち返り想像しなおす。と、それを繰り返す。ひたすらに。

こういった役作りをしていると、人間の単純さ複雑さを思い知らされます。考えれば考えるほどあっけない動機が見えたり、絡み合い飛躍する機微のフローが見えたり。
そして不思議なことに、しつこく考え続けていくとハっとする瞬間が訪れる。
「そうか、これはこういうことか」
と合点がいく瞬間。ブレイクスルー。
そこに到達したときの感覚は、得も言われぬもの。
この瞬間に役と自分の思考がリンクするような。
これはすさまじい快感で、役者の醍醐味のひとつ。
と思います。

あと40日。

秘密は成立し物語を生み出すのか。
思考と快感の往復の製作は続く。

(文責 江藤役:関谷誠)

外堀を埋めているスタッフの筆頭です。小道具がだいぶ揃ってきて、舞台装置のプランも固まり、大道具製作会社との打ち合わせも進み…靄に包まれていた本番までの道筋が少しはっきり見えるようになってきたかな!?という感じですが、まだまだ油断せず着実に進めていきますよ。役者さんたちの頑張りを舞台で輝かせられるよう頑張ります!

(江平@管理人)

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